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2012年4月8日 - 2012年4月14日

2012年4月10日 (火)

レコードを処分した日

20代のころに聞いていたジャズのレコードが数えてみれば60枚もあった。マイルス・デビ
ス、コルトレーン、エラフィッツジェラルド、マルウォルドロン・・・。1枚2500円程度から
3000円以内だったから、計算すると16万円くらいになる。よく買いためたものだ。

当時、仲間とともに年に4、5回、詩の同人誌を出していたが、そのガリ版印刷をしたり合
評をしながら、ジャズをかけることもあった。

LPレコードを聴くためにはそれなりのオーディオ機器が必要だが、今はない。回転盤を回
すゴムのベルトが劣化して使えなかったり、一時、針が手に入らなかったりしてレコードを
かけることがなくなっていた。

30代初めに結婚して、アパートや借家生活をし、自家を持つようになってからもレコードを
かける気持ちがなくなっていた。車を運転するようになると、小遣いは車関係や家のローン
に回り、ステレオ装置を買う余裕がなかったためだ。

ジャズは今ではレンタルCDで聴いている。もうあのレコードは聴くことはないと思ってい
た。ではどう処分したらよいか思案していたところ、偶然、町中で「レコード買取」の看板が
目に入った。

連絡すると早速業者がやってきた。ネット販売をしているそうだ。去年の震災後、郵送に時
間がかかるようになった時期があったが、それ以降、あまり売れなくなっているという。日
本の演歌やポップス、クラシックはほとんど値がつかないがジャズなら扱える。ただ、流行
りすぎていたものはダブついていて値が張らない、自分の感でこれは、と思ったものは、盤
面にキズがないか確認している、シングル盤は意外に高値がつくものもある・・・。

捨てるつもりで脇に寄せていたシングル盤だが、そういうことなのかと思って彼の前に出し
た中に、プロコルハルムの「青い影」があった。これは昔流行ったよな、喫茶店で流れてい
たしジュークボックスでかけたこともあったよ、などというと、その業者「おれ63だけど、お
宅もそのくらいか?」と聞いてきたので、自分も同じだと返し、知った顔かどうか互いに見合
ったりした。

やはり知らない顔ではあったが、ジャズの世代、団塊の世代の人間が、一人はレコードを
手離し、一人はそれで商売をしている。ああ世の中って面白いよな。今頃はリストを作った
りして、そのうちネットに流したりするのだろう。自分の手から離れた今はどうでもいいこと
ではあるけれど、高く売れたらいいと思っていた。

2012年4月 9日 (月)

母を見舞った後で

先月末に、母親の容態が危険な状態にあると入院先から連絡を受けた。医師の話だと、意
識がフッと途切れたことがあったようだ。心肺停止の状態にいつ陥るかもしれないとの心配
があった、と。

齢90代も半ば、それまでの施設生活に続き、5年間も病院で寝たきりの毎日を過ごしてき
た。認知症ゆえ会話も成り立たず、分かっているのかいないのか、息子の言葉に反応もなく、
時にうなづいたり、その日に、その時々に何かの喜びをまたは腹立ちとか怒りとかを感じてい
るのか。

ベッドに横たわっているしかない立場と、その横で同じ目線でまたはベッドガードに両手をあ
てた中腰での上から目線で見下ろしている立場との、距離にして30センチと違わない近さ
が、たとえば光年ほどの距離にも思えてくる。

この息子、母の顔や肩や腕をさすったりしてその温みに子供のころ甘えた時の感触が降りて
くるのを感じたり、上腕に思いのほか残っている筋肉を掌ではさんだりして、この分だとまだま
だ大丈夫だろうと一人よがったりする。

顔を近づけると母は時に、いきなり腕を伸ばして私であったり看護師であったり、とにかく相
手の顔を引っ掻いたりする。ボクシングで言うとフックか? その鉤状に曲げた指でメガネを
引っかけたり、ジャンパーの襟やボタンをつかんで握り、離さない。が、抵抗しない方がよい、
やがて力を緩めてくれる。そんな力がまだ残っている。

連絡を受けてから10日ほど経ったが、幸いにして持ち直してくれている。再び平穏な日が続
いている。息子は、見舞った後再び自分の家に帰ってきた。

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