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2014年8月24日 - 2014年8月30日

2014年8月30日 (土)

久しぶりの山歩き(2)

 いろんな話を聞かせてくれたその人が下山の支度を始めたので、こっちは前
岳まで足を延ばすことにして、挨拶をしてわかれた。前岳に向かってる間、女
人堂で失火した彼のことを思った。人並み外れた体力にものをいわせて山を走
り、ときに100キロの荷を背負い、トレーニングと称してザックに砂を詰めて女
人堂付近を上り下りしている男。その彼も年には勝てず、腎臓を患った。しかし、
八十歳になった今、昔のようにこの山に登りたくて、娘といっしょに4時間かけて
登って来た。人生の何か無常を感じさせる話だった。

 女人堂跡付近でナナカマドが赤い実をつけていた。下山路、名の知らない花
々をケータイの写真に撮った。山は登るたびにさまざまな季節の草花やエピソ
ードを繰り出してくれる。路傍の石仏のところでザックをおろし、石仏を写生しに
かかった。七月初めにもそのためだけに、ここまで登り、スケッチを試みたこと
があった。しかし、思ったようには描けなかった。今日もまた、石仏本体や周囲
の草や木々も描こうとする。しかし、30分ほどかけて、特に両の眉や目、頬の
緩やかなラインを描くことに四苦八苦するが、ただスケッチ用紙を汚すだけだっ
た。

久しぶりの山歩き(1)

 おととい、登山靴の底にへばりついた泥を落とした。そして今朝、久しぶりに
靴を履いた。金山滝から前岳へ。三本の木の丸太橋付近で見ると、水量は前
回来た6月に比べて少なかった。雪解けの季節はすでに遠のき、雨もここ数日
なかった。

 乾いた路を登っていく。ミヤマアサギリのほかには名前のしらない花がいくつ
も咲いている。歩を進めていくと、驚いたことに、季節外れのヒメシャガが一輪
咲いていた。ふつうなら開花時期は六月から七月初めの頃のはずだが、遅咲
きということだろう。オオカメノキの実が赤く色づいていた。

 木々の間を吹き抜けてくる風が心地よい。何か仕事に就いている身ではな
いので、基本的には毎日ヒマなのだが、八月は忙しかった。娘の結婚、法事や
盆、娘の夫君の両親家族が来泊するなどのことがあった。このひと月、山に来
れなかった。それは多忙のためではなく、なにより、雨の日が多かったから。
仮に忙しかったにしても一日でも二日でも、雨の合間に晴れた朝があれば山
に急行するという気持ちは持ち続けていたが、ようやく今日になった。それだけ
に今日の風がうれしい。

 女人堂には先着が一人いた。高齢の人で話をするうち、この山にはかなり精
通している人だと分かった。女人堂が焼けた時の話になった。私は焼失の原
因は、小屋のストーブに燃え残った滓が何かに引火して火災が起きたと聞いた
ことがあり、その通りと思い込んでいたが、この人の話では次のようだった。

 
 女人堂は太平の三吉神社が建てて登山者に利用させていた。そのうち、ひ
とり居着くようになった者がいて、我が物顔に振舞うようになった。皆、それを
快く思う者はなかった。冬、ストーブの火の後始末が心配になった皆は、スト
ーブを撤去し、代わりに火鉢を置いた。ある晩、男はそのときも火鉢を使って
いたが、酒に酔って体のバランスを崩して火鉢を倒してしまった。周囲に散ら
ばった炭火の始末をしたつもりだったが、消し残した火があって、畳などに燃
え移って火災になってしまった。

 それが事実だとこの人は話してくれた。その後、彼は神社から訴えられて裁
判になり、結果、賠償金を払うことになったという。火災後、彼はこの山に滅多
に登ることがなくった。

 また、この人はこうも語った。彼は体格がよく、百キロの重さの荷物を背負っ
て山に登ることがあった。また、人が2時間半かかるところ45分で登ったという。
にわかには信じられない話だと私が言うと、この人は、自分もほかの仲間も見たこ
とだから嘘ではないという。そんな怪物がいるのかと、私はまだ信じられない。
その彼も今ではもう80歳になって、人工透析を受けている。この前、彼は自分
の娘と一緒に下の温泉施設からこの女人堂まで登った。若いころには30分ほ
どで登っただろう路を4時間かけて登ったという。よほどここに登って来たかっ
たのだろう。

 
 

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