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2014年11月30日 - 2014年12月6日

2014年12月 4日 (木)

シカの食害に関する本を読んだ

 秋田の山にも昨年あたりからニホンジカが目撃されている。今年9月頃の地
元紙では、隣県岩手でシカによる農業被害が2012年度で2億8千万円にの
ぼっていること、本県での被害をできるだけ抑えるため、ハンター(狩猟者)に
よる有害駆除で対応したいが、狩猟免許者が年々減少し、一昨年度は1900
人余りに減り、しかも高齢化が進む一方であるため、有害駆除や警戒などに
当たる狩猟者(特に若手)の確保が課題となっていることなどを伝えていた。

 3年前に神奈川県丹沢に登ったことがあった。ヤビツ峠からの登山道を行き、
塔ノ岳まであと1時間くらいのところで気づいたのが、登山道に沿って金網フェ
ンスが張られていて、それはシカの侵入を防ぐための防護柵だった。それはか
なりの延長になっているように思えた。また、山路近くに立つ苗木には防護ネッ
トが被せられていた。

 これらは神奈川県がシカの食害から樹木や植物を守ろうと施したものだった。
丹沢山域は神奈川県の水源涵養林であり、樹木が失われていけば山の保水
機能が衰退し、県域の水の確保が難しくなる恐れがあるからだった。

 今あらためて「日本百名山登山ガイド(中)」(山と渓谷社2011年刊)の丹沢
のページに載った写真を見てみると、登山道周辺のササの斜面と樹木が映っ
ているが、ササの丈が低いのはシカの食害にあった笹が成長しきれていない
からではないか。そのササの斜面の下部には地面がえぐれているが、それは
長い期間にわたっ降雨を受けた地面が、ササの根による支持を失ってしまっ
た結果、表土が流出したものではないか、そんな気がする。

 東北では岩手県釜石市の西にある五葉山がシカの生息する北限とされてい
た。それ以外の北東北では、冬期の豪雪の中では身動きの取れないシカは絶
滅したとされていた。それが今では岩手県内はじめ青森でも目撃され、生息域
を拡大しているようだ。最近では、鳥海山麓の中島台レクリエーションの森付
近や、青森県深浦でも目撃されたと、これも地元紙が伝えている。

 今回読んだ「シカと日本の森林」(依光良三編築地書館)、「世界遺産を喰らう
シカと森の生態学」(湯本貴和・松田裕之編 文一総合出版)には、専門家たち
がシカの食害から(農業被害ではなく)森林を守らなければという立場からの考
察を述べられている。

 シカによる食害のなかでも特にショッキングなのは、樹木が、樹皮剥ぎによっ
て枯死してゆく様子で、樹木の根元からシカの背丈くらいの高さまでシカが食
い尽くして丸裸にしてしまう。そうなってくると樹木はもう立ち枯れたり倒れるし
かない。それでなくても林床の植物が食い尽くされれば土壌から養分が失われ、
樹木が育たなくなる。驚いたことにシカは食べるものがなくなれば、地面に落ち
た落ち葉まで食べるという。それを想像すると、秋田の山は大丈夫かと心配に
なってくる。

 このような状況を放置しておけば森林自体が消滅し、山から土壌が流出し土
砂災害の原因をつくる、また、生態系が失われる(森林がなくなれば虫が来なく
なり鳥も来ない、リスや野ネズミなどもいなくなる)ことが必至なため、これはや
はり何らかの対策が必要でしょう。

 二冊を読むと、シカから森林を守らなければという立場からの発言が一般的
になっているように感じた。しかし、増え続けるシカの食害から森をどう守るのか、
決定的な対策はなく、そもそも頭数の把握すら難しいというのが実態のようだ。

 「シカと日本の森林」によると、丹沢のシカ対策費は約2億円(2009年度)だ
ったと書いてあるので、その高額に驚く。同じシカの害に悩む四国の剣山・三嶺
山系では二千五百万円(2009年度)、紀伊半島大台ケ原八千万円、知床四千
万円・・・だという。昔と違って温暖化の進む地球だから、シカが入ってこなくなる
ような豪雪に見舞われるということなど、将来のこととしては考えられない。その
ような豪雪なら第一、雪を生活や交通網から排除してきた人間が困ることになる。

 秋田には白神山地、奥羽山脈、出羽山地、丁山地、鳥海山麓など豊かな森林
がある。たとえシカが目撃されたといっても、そこが生息域になっているとはまだ
いい切れないが、しかし、食害がいつどこで始まっているのか。気づいたらシカ
が山を跋扈し、あたりは食害だらけといったことにもなりかねない。これはまず
は、腰を据えてシカの生息や食害の実態を把握することからしか始まらないので
はないか。

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