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2014年2月23日 - 2014年3月1日

2014年2月28日 (金)

アンネの本の被害

 昨今、「アンネの日記」などアンネに関する本や第二次大戦中のユダヤ人に
関する本が、東京都内5区38市の図書館で300冊以上が破損されているとい
う。驚きだ。

 ある大学准教授は、新聞で「背景には日本社会の右傾化があるのではない
か。戦後の歴史観を否定しようとする意見がネット上では広がっている。大戦
の戦勝国側の価値観をすべて否定しようという意見さえ出始めている。その
延長上に敗戦国が反省すべき象徴ともいえるホロコーストに関する本が狙わ
れたのではないか。「ユダヤ人虐殺がうそなら、南京虐殺や慰安婦問題だっ
て全否定できる、日本は悪くないと主張できる、という歪んだ発想かもしれな
い」と分析している。

 もしそうなら、意見を言葉で主張すればよいものを、隠れて本を破損させると
いうのは卑怯な話だ。中国や韓国による反日的な言動に反対する意図がある
なら、例えばその国の歴史や文化など理解を進める図書も傷つけるといったと
ころまでゆくのだろうか。

 右傾化といえば、最近の政治家やNHK関係役員の発言はまさにそれだが、そ
のことが戦後これまで醸成してきた日本人への信頼を傷つけ、日本を孤立化さ
せるようになり、これまでにはなかった日本や日本人への偏見が国際的に広が
っていくことが心配だ。

 それに、公共の本を破損するという行為自体もまた非難されるべきものだ。本
一冊でも公共財だ。破損が見つかった図書館では、特別の対応をとるという話
にはなっていないようだ。被害が収束するならそれもよいだろうが、動きが広が
るようなら、たとえば、期間を定めて関連本はどこかにしまっておいて、閲覧した
い人には利用者カードの提示を求め、返却時に本を確認する、などのことをして
もよいのではないだろうか。

2014年2月23日 (日)

鴎外の短編を読む

 なぜか、鴎外の小説を読んでみようという気になった。図書館書架に数種並
んでいる文学全集のなかから1971年発行の新潮社のものを選んだが、他社
のものよりも文字や行間が気持ち大きめに感じたからだった。

 以前、「山椒大夫」と「高瀬舟」を読んだ記憶はあるが、他はなかったので気
になっていた。意外な発見だったのは「高瀬舟」も「阿部一族」、「堺事件」、「じ
いさんばあさん」も歴史小説で、今でいえば藤沢周平とか山本周五郎などの
ように江戸時代の武士を主人公にした小説を、鴎外が書いていたということだ
った。しかし意外といっても、考えてみれば明治維新の六年前に生まれている
のだから、題材を少し遡った時代に求めれば江戸期になるわけで、昭和生ま
れの人が戦前戦中のことを書いていることと同じで、不思議ではないことにな
る。

 昔の人にとっての歴史物といえば、忠臣蔵とか歌舞伎の題材になっている話
を連想するけれど、明治には明治の人の歴史小説があったのだろうと思った。
無駄のない引き締まった感じのする短編だった。

 「山椒大夫」。主人公が成年後、佐渡に渡って、老女が粟を打ちながら自分た
ち姉弟の名を歌っているのを見る、それが自分の母であることに気づいて、そ
して女の方も目の前にいるのが厨子王だと知って抱き合うという場面では、ウ
ルウルになっていた。

 「百物語」。そもそも百物語とは、大勢の人が集まった中でローソクを百本立
てて、一人が一つずつ怪談を披露し、一本ずつローソクを消してゆく。百本目の
ローソクが消されたときに本物の化け物が出現するという話だという。しかし小
説では主人公は、この集まりを主催した人物とその人物に寄り添っている女の
素性や関係の方に関心を寄せ、その人物像に迫っていくという筋立てだった。
で、怪談を聞くという場面には至ることなく、小説は終わる。してやられた。
 
 

 「雁」は中編だが、語り手の友人が思いを寄せる女性像が描かれている。太
宰治の小説では作中の女性のイメージが薄かった、なぜだろうと思ったことが
あった。鴎外のこの小説の女性はイメージできる。時代がかっているのは仕方
のないことで、それは主人公である女性がお妾さんであり、また、明治新政府
の元、東京も開発のさなかにあったことが書かれているからだと思われた。さ
して高揚感のある小説ではない。それは恋愛感情が主人公の背を押して行動
へと駆り立てるようなものではなく、あっさり水の流れる如くはかなげに描かれ
ているように感じたが、そのせいではないか。

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