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2015年12月 4日 (金)

旅に関する三冊(1)

1 「チャーリーとの旅」(ジョン・スタインベック ポプラ社)
 「怒りの葡萄」や「エデンの東」を書いたスタインベックが1960年、
58歳の時に、アメリカを横断し周回した紀行文。この旅で4カ月か
けて1600kmを走った。

 「私は自分自身の国を知らないと悟った。・・・・私はアメリカの言
葉を聞かず、草や木やドブ川のにおいを嗅がず、丘や川の色合
いやきらめきを見ずに過ごしてきた。変化というものに触れるの
は本や新聞を通じてだけだった。何より二十五年にわたってこの
国土に触れてこなかったのである」「だからもう一度見てみよう。
この怪物のごとき国を再発見しようと決心した」・・・・これが、旅の
動機だった。

 そのために準備したのが、積載能力750kgのピックアップトラッ
クだった。内部にはキャンピングカー用の居住スペース、ダブル
ベッド、コンロ、ヒーター、冷蔵庫、照明、トイレ、収納庫などを積
み込んだ。愛犬とともにニューヨークを発ち、ニュー・イングランド
~ひたすら西へ~シアトル~サンフランシスコ~ニューオーリン
ズ~ニューヨークと周回する。

 車に準備したもの中にライフル銃もあったのが、アメリカを感じ
させる。方言が徐々に消え、画一的な標準語に変わっていくこと
や都市化の波が広がっていくのを見て嘆いている。シアトルでは
自分がかつて見た風景が、狂ったように発展している様を「発展
というものは、どうしてこうも破壊と似ているのだろう」と書いてい
る。南部を通過すればいやでも目にすることになる黒人差別の
現場・・・・・。

2 「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」(レイチェル・ジ
  ョイス 講談社)
  
 イギリス南端の町に暮らす65歳の男が、スコットランドに近い町
の病院でガンに冒され死に瀕しているという昔の同僚から手紙を
もらい、それへの返事を手にして、投函しようとして郵便ポストを
探す。ポストは見つかるが、そこをやり過ごして次のポストを探す。
見つけるがまた次のポストへ・・・。ついにそのままスコットランド
方面へ歩き始める。

 自分が行くまで入院中の元同僚の命が続きますように、そんな
願いが彼を駆り立て、80日間、1千キロを歩いて、病床にある元
同僚のもとにたどりつく。

 旅の途中、主人公の妻や息子への様々な思いを読み進むうち
に、背後にある彼の家族関係が解き明かされていく。誤解や行き
違いに惑わされながら、感情の奥そこにある本当の心に気づく
主人公と妻。

 かなり省いてしまえばそんなストーリーだ。
 全く準備もなく、普段着のまま、地図も何も持たず背負わず、コ
ンビニ袋くらいで、旅の始まりとはいえないような徒歩の旅が始
まる。普通、旅って何らかのチケットを求めたり、予約したり、何
らかの準備はするもの、そう思ってきた身には、この小説の始ま
り方は意表をついていて面白い。飽きることなく読みきっていた。

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