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2015年12月 4日 (金)

旅に関する三冊(2)

3 「プラネット ウォーカー(無言で歩いてアメリカ横断17年)」ジョ
 ン・フランシス著。(日経ナショナルジオグラフィックグラフィック社)

 著者が自分の実体験を本に著したもの。
 1971年サンフランシスコ湾で起きた原油流出事故を目撃した若
者が、その後、自動車を運転するのも、人に乗せてもらうのもや
める。しかし、この決断に対しては、例えば「人一人が歩くことに
したからって、大気汚染や原油の流出は減らせない。かえって、
ほかの皆のガソリンの消費量が増えるだけだ」などと批判されて
しまう。

 自分から仕掛けるわけではないが、聞かれれば自分の「歩く」生
き方を始めた理由を話さざるを得ない。そこに激しい議論があった
り、自己弁護や虚勢や、自分への偽りが見えてくる。著者は、27
歳の誕生日に、この日から沈黙を守ろうと決意する。

 9年後、著者は友人と非営利の教育機関「プラネットウォーク」を
設立し、徒歩による巡礼を通じて環境保護の意識を高め、世界の
自然を守り、平和の達成に尽くす運動を始めた。そして、1983年
1月、カリフォルニア州ポイント・レイズを起点に徒歩、無言の旅
を始める。彼は太平洋岸沿いに北上し、ワシントン州ポートタウ
ンゼントからは東へ向かう。イエローストーン公園、ミシガン湖の
南端を経てまたひたすら東へ向かい、7年後に大西洋岸に到達
する。

 旅の中で、沈黙すること、言葉を語ることなどについて考察を
深めて、それはそれで考えさせるものがあるが、アメリカという
国の懐の深さも感じた。

 旅の途中で、話しかけられても無言の彼を訝しむ人には、「プ
ラネットウォーク」の設立趣旨を書いた紙を見せたりした。極寒の
冬はそのコース上の土地に住んで春を待ったり、そして驚いたこ
とに、旅の途中三カ所の大学で学び、学士号、環境学で修士号、
土地資源研究で学位を取得するなどして旅を続ける。アメリカで
は旅人でもそんなことができるのかと驚く。あらかじめ入学許可
をもらっていたりしたようだし、昔はアメリカの大学は入るのは難
しくはないなどと聞いたことがあったが、そのようなことか。日本
では、決まった時期に行う入試に合格する以外に大学に入学す
ることはできないのではないか。社会人向けの講義が開かれて
いる場合もあるが、旅行途中の人でも受講できるものだろうか。
 
 彼が大学で授業の補佐をするときは身振りやホワイトボードに
書いたりしたのだろう。大学で受講する際、質問や解答のときも、
身振りやメモ書きで受講した。そのほか、彼が通りがかったこと
を知った町の学校教師が、彼に頼んで講師となり特別授業をも
ったりしたことも数度あった。アメリカではそんなこともできたりす
る。民間人がいきなり授業で教壇に立つことなど、日本では考え
られないのではないか。そんなふうに実をとるために柔軟な考え
に立てるところがアメリカの優れた点なのだろう。

  旅の後、彼は、国連環境計画プログラムの親善大使の任命を
受けたり、原油流出の規制法作成を手伝うことになる。旅の途中
で博士号を取得したことが評価されたが、考え方が独創的で突
拍子もないことも力となった。彼を指名した人から「法案の起草や
経済や環境の分析に関することで、どんなに突拍子もなく非現実
的と思えるものでも構わない」言われる。

 また、遠隔地の人間と会議や話し合いが必要な場合は、徒歩
や自転車で行くなど悠長なことはやっていられない。衛星通信
システム(テレビ会議のようなものだろう)を使わせようという。い
わば公機関で、目的のためにあらゆる手段を許容するという。
日本では、会議に出張する者の交通手段は新幹線とか飛行機、
車など決まっていて、これに従わない者は採用ストップになった
り、採用されてもやがて排除されてしまだろう。

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