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2015年9月27日 - 2015年10月3日

2015年10月 2日 (金)

滝ノ上温泉口から乳頭山へ(2)

 ゴーロ状の坂道をこなしつつ高度を上げて、青空の方へ突き進ん
でゆく。ほどなく石積みがあった。そこに立つとようやく乳頭山が見
え、いきなり強風に晒された。今日は甥も同行したが、二人とも雨
具を上下とも着込んで、乳頭山への登りを続けた。

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(↑石積みと乳頭山頂)

 11時20分山頂着。3時間かかった。風が強くて落ち着かないの
で、風の来ない分岐まで戻って昼食とした。下山は、もと来た路を
下る。バッタを見つけたので近くに寄ってカメラを向けると、草むら
に隠れた。さっきは、別のバッタが地面に横たわり、ときに弱弱しく
脚を動かしていた。山の上のこと、日が出て暖かいといってもたか
が知れている。朝晩はかなりの寒気があの小さく柔らかい体に差
し込むのだろう。ましてや今朝は岩手山頂には白いものが見えて
いたくらいだから。

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 濡れた岩に足は置かないように、滑りそうな路面に踵から踏みだ
さないように。慎重に足場を選ぶ。丁寧に下る。木道も濡れていれ
ば滑りやすい。

 マムシ坂から下の樹林帯になり、白沼に出る。秋の広葉樹林はさ
まざまな木々が色づき、木の実も赤く賑やかに風に揺れている。ブ
ナの大木は遠目でも存在感を備え、名の知らない白い老木も、種か
ら発芽したこの場所で春夏秋冬、裸になった枝は半年後には豊か
な葉を茂らせ、秋には色づき、そして葉を落とし、そうして雪や風と
戦いながら歳月を重ねてきたことを思えば、古老をみるような気持
ちになる。まだ粧い始めたばかりだ、葉を落とすにはまだ早いよ。

  段差があるところではヨッコラショとストックに頼りつつ下っていく。
空がすぐ頭上にあるハイマツ帯をゆくのとは違う、何かが自分の中
に起きている。葉が上を覆った林の路では、木々を見れば木々に、
風になびく葉に、揺れる木の実に、路に、石に、草むらに、風が体
を触っていけば風に、ふうーっと溶けて身体も感情もなくなり、目と
耳だけになって、山に融け込んだようで、それを“心地よさ”といえ
ばいえるような、そんな感じになる。靴は勝手に石ころが落ちるよ
うな音をさせている。

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 登る前は寂しく心細い路を想像していたが、どうして意外にもこ
のコースは、三時間の登路中変化を味わえる好ましい路だった。
行路中数か所の道標に書かれた山頂の名は「乳頭山」ではなく、
岩手の路らしく「烏帽子岳」とか「烏帽子岳(乳頭山)」と刻まれて
いた。駐車場は50台は停められる広さで、一面舗装されている。
一角には清潔なトイレを備えた休憩施設があった。下山後、三ツ
石山への登山口を探しに案内板に従ったが、橋を渡ってから左
へカーブするとすぐに見つかった。これも今回の登山の収穫だっ
た。

滝ノ上温泉口から乳頭山へ(1)

 乳頭山に、これまで岩手・雫石側から登ったことはなかった。山頂
に立つと、雫石滝ノ下方面へ延びる路が見下ろせ、そこを登ってきた
人、下山して行く人の姿を見たことがあり、いつかそのコースを歩き
たいと思っていた。先日、その初めてのコースを登ってきた。

 印象に残ったのはコースがよく整備されていたことと、コース沿い
に白沼という沼があること、コース途中から岩手山や三ツ石山など
裏岩手縦走路の稜線が眺められること、乳頭山からは千沼ケ原湿
原を通って戻る周回コースも選べる、などだった。今日は白沼のあ
るコースを往復した。

 登り始めの山路は、刈り払いが昨日か今朝行われたばかりだった
ようだ。コースの一部必要なところを鎌で払ったという印象で、路傍
には刈り払われたササが残っていた。それでも人手の入った登山
道は、放置されて荒れた路とは違って、安心して行き来できる。あり
がたいことだった。

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 つい思いが飛んでしまうが、乳頭温泉郷・黒湯からの路の後半の
一部を覆うあの草は刈り払われただろうか。田代岱山荘から孫六
温泉へ至るコースの下山して初めのあたりの“荒れ”はあのままだ
ろうか。

 山歩きが好きだというただそれだけの者にとっては、歩かせてもら
うありがたさをいうことはできても、コースの整備をどこかにお願い
することは心得違いのことと思えて、何も言うことはできない。行政
がやってくれればいいのになあ、とは思うが。そして、そのコース上
で軽い転倒事故があってもそれは、登山者が自分の不注意を恥じ
るくらいしかできないのかもしれない。そんな思いをもつ者にとって、
今日のコースは、先日の松川温泉から三ツ石山へのコースと同じ
くらい人の手が入っていて、地元の人たちの気持ちが感じられてう
れしかった。

 白沼は、モリアオガエルの繁殖地で、岩手県の指定天然記念物
になっている。野球場ひとつの広さくらいだろうか。樹林帯を歩い
てきてこの沼を目にした後しばらくは、水のある風景を心に広げな
がら登りの路を行く。湖畔のダケカンバの白い幹も印象深かった。
まもなくさしかかる坂はマムシ坂だという看板があった。手書きで、
これも温かさを感じさせる。背後には、先日歩いた三ツ石山から
小畚岳へ至るなだらかな高原の稜線がスカイラインを画していた。
右には山頂部に白い粉をまぶしたような岩手山があった。(帰りの
車のラジオで岩手山は今日、初冠雪だったという)

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(↑白沼)

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(↑白沼の水面に白く反射する糸のようなものが浮かんでいた)


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(↑沼の横の路)

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(初冠雪の岩手山)

 途中、私と同年輩と見える男性が下りてきた。ピストンですか、と
尋ねると「いやあ、昨日、乳頭温泉に泊まって、これから松川温泉
に行きます」という。いま私等が来たコースを滝ノ上温泉口まで下り、
そこの登山口から登って三ツ石山荘手前の分岐を右方面へ下って
いけば松川温泉に出る。ああ、そういうコースのつなぎ方もあった
のだなと思った。山にだいぶ慣れている人のように見えた。

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