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2015年2月22日 - 2015年2月28日

2015年2月27日 (金)

「極北で」(ジョージ―ナ・ハーディング著)を読んだ

 まだ2月なのに家の周りに雪はなく、3月、それも下旬のような日
和が続いている。しかし、春を迎える気持ちになるには早すぎるし、
晩冬というには晴れた日には空が明るすぎる。どっちの時節の側に
気持ちを寄せて日を迎えたらよいか、どこか落ち着かない。

 『極北で』には「1616年、北極海。たったひとりの越冬」という帯が
表紙裏に貼り付けられていた。「400年前の航海日誌から紡ぎださ
れた壮大なデビュー長編」というフレーズもあって、何か惹かれるも
のがあった。

 主人公は英国の捕鯨船の乗組員で、同僚とのひょんな口論の末
に、捕鯨シーズンにはその基地をおく島、スカンディナビア半島の北
端と北極点の中間にある島に一人残って越冬することになった。食
糧など越冬に必要な物資は十分に確保して。ほかの乗員のすべて
は、翌シーズンに島に戻っても、生きたままの彼の姿を見ることはで
きないだろうと思っていた。八カ月(?)くらいして、捕鯨船がくると、
乗員の予想に反して、かれは生存していて、仕事を再開する。

 主人公は、出航前に、妻が難産の末、胎児とともに命を落としてい
た。このことは彼の内面に大きな陰を落としただろう。しかし、それだ
けを越冬の理由とするには無理がある。彼自身のなかに、それを選
ぶ性向があってそれが強く作用したのだろうとしかいえないように思
える。それはどんなものだったのだろう。

 彼は冬の北極海に閉ざされた日々、アザラシやシロクマたちの、
生命を維持するための戦いを目の当たりにして、彼らこそこの島の
主人公であり、ここには人間は立ち入るべきではない、と思う。文明
の利器をこの島に、この圏域に持ち込んではならない、という思いを
抱くようになる。主人公は捕鯨船の乗員が何百頭ものアザラシを撲
殺した様を見たことがある。そうした殺戮を平気で冒してしまう人間
が足を踏み入れる世界ではないと。

 彼が帰国してからも、あの島で見たこと経験したことを一切語るこ
とがなかったのはその思いからだったろう。

 興味深かったのは、捕鯨船での仕事や極北の島での生活は、17
世紀初めのものとは思えなかった。帰国後の英国内の、呪術や魔女
というのか、悪魔を秘めた人間がいるという前近代的な習俗が描写
されていて、そのなかに当時の時代を感じ、想像することができた。

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