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2016年6月19日 - 2016年6月25日

2016年6月20日 (月)

岩手山は花の山だった

 4時45分に自宅を発って、7時20分に馬返し登山口駐車場に着いた。すでに
多くの車があった。ここは標高608mだから山頂(2,038m)までの1,430
mを登る。

  水600ml、ポカリスエット500ml、ミニあんぱん(朝食の残りの4個)、オニ
 ギリ(3個)、行動食としてドライフルーツ(前回の残りのマンゴーとバナナ)、
 塩飴。
 着替用衣類はTシャツ2枚、長袖フリース、タイツ、長袖下着、雨具上下。

 ザックを背負おうとしたら重い。なんで、と思ったが思い浮かばず、水彩パレ
ットは車内に残すことにしたが、鉛筆スケッチはできるようにと水彩紙と鉛筆な
どは持参する。しかし、パレットを外したくらいではそんなに変わらない。まだ
重い。重いのでゆっくり歩く。

(帰宅後点検すると新品の虫よけスプレーを見つけた。これをザックに入れた
ことを忘れていたが、重く感じた原因はこれだったようだ。)

 駐車場から進むとトイレ1棟、その先の広場に新しいトイレと四阿が1棟あっ
た。水場もあるのでここでテントを張る人たちがいるかもしれない。登山届に
は7時40分出発、午後4時下山予定と記入した。

 0.5合目という標柱があった。そうだった、初めてこのコースを登った10年
前に小数点入りの合目を初めて見たが、その後、富士山でも上の方に行くと
0.5合ごとに山小屋があった。登り始めてから1時間、頭上からの日差しは
樹林が遮ってくれているが、もう汗がしたたり落ちてくる。道沿いにおいしそう
に香ってきそうな色合いでヤマオダマキが咲いている。チョコレート色の傘、
クリーム色の電球。そして、まるでテントサイトのランプだ。花が下を向いてい

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るので、見ようによっては路を照らしているようだ。結構長く路傍を飾っている
のがうれしい。2.5合目から3号目は新道と旧道に分かれている。10年前は
旧道を登り、新道を下ったが、今回は新道を登ることにした。ところでこのあた
りからつらい。やはり荷が重い。熱中症になるのでないか。このまま登り切れ
るか、右ひざがどうも気になる。8合目まで行ったら引き返してもいいか、と弱
気の虫が目覚めてくる。時折空気が涼しい。それは高度をあげてきたからだろ
う。だからといってもっと登れば涼しくなる分、途中引き返す道のりは長くなる。
こうしてUターンする選択肢を捨てていくんだよなあ。

 5合目。ナナカマドの花。ダケカンバの葉が葉脈も明瞭で、幹の白さと対照
的。6合目。ここに来る前から何か所かで番号のついた丸太が何本もびっしり
と道幅いっぱいに打ち付けられていた。階段のようだが、道の両端になるにつ
れて高くなっている。これは階段というより、雨水によって道の土砂が削られ
て流出するのを予防するためのように思った。別の場所では道の横の斜面
からの流れ込みを防ぐように縦に杭が並んでいる。これを見ると、秋田駒ケ
岳焼森付近の縦走路はまだ手つかずだろうかと思いが飛ぶ。雨水でかなり
浸食され、流失防護用の木材はあってないような状態だった。ここもあそこも
同じ国立公園なのに扱いが違うのなぜだろう。百名山と二百名山の違い?
まさか、そんなことが理由になることはないはず。

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 ツクバネウツギやハイマツを写真に撮っていると、ヘルメットを被った高
齢の男性が下りてきた。下山路をどうするか考えていたので、新旧どちら
が下りやすいかを尋ねると、新道がいいでしょう、という。旧道は細かい石
が滑って転びやすい(そうだった。10年前の記憶が徐々に立ちあがって
くる)。その点、こっち(新道)の方は路がしっかりしているからというのが
理由のようだ。七十代、いや八十代に入っていそうな感じの人が標高差千
メートル以上も登ってくるのかとたまげてしまう。こういう人を見ると、こっち
だってまだまだいけるという気持ちになる。

 シラネアオイが結構多く咲いている。そして、シロバナエンレイソウは珍し
いのでカメラを向け、そのついでにひょいと辺りを見るとサンカヨウだ。この
花を見たのは大分前のことだ。県南の山で見たくらいでずっとお目にかか
っていなかった。雨の後など花びらが半透明に透けて見えて、こんな花も
あるのかと印象に残った。それが今目の前で群落をつくっている。驚きで
ありうれしくもあった。今日の花は透明感はなくしっかりした白だ。季節の
プレゼントをもらった気分だ。岩手山は花の山でもあった。まだ歩いたこと
がない鬼ケ城コースではどんな花が見られるだろう。

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 サンカヨウを見てからすぐに7合目に着いた。ここから山頂のお鉢が見える。
新道と旧道との分岐にもなっている。ここから10分で8合目の避難小屋に到
着。小屋は改築されたようだ。木材も新しく明るい。20人くらいの登山者が三
々五々休んだり、水場の水を汲んだりしている。小屋のデッキに上がってそれ
らしい人を探して、下山路は新旧どちらの路が歩きやすいか、さっきのおじい
さんに聞いたのと同じ質問をしてみた。はじめのうちは新道を勧められたが、
岩の段差をこなすのが難儀だというと、新道は岩礫、砂礫が滑りやすいので注
意してください、という。それでも眺望はきくし、段差の面では新道よりも楽だ。
旧道を下っていって4合目からは新道を下った方がいい。自分たちはそうして
いる。そんな親切な助言をありがたくいただいて、不動平に向かった。

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 不動平から山頂へ。途中から黒い砂礫(スコリア)の滑りやすい坂を登る。
道端には石仏が並んでいる。空にむき出しになっている白い石面が秋田・中
岳の緑の中に多立つ石仏よりも何か不気味さを感じる。12時55分、ようやく
山頂に着く。5時間15分の行程は長かった。なんとかキンバイの咲く不動平
ではためらった挙句、昼食は上で食べたいという気持ちが強くついに山頂ま
で行くことにしたのだった。

 山頂は風が強く、半袖の上に長袖シャツを重ねた。カミさんの握ったおにぎ
りを食べた。カミさんは学生時代に教授や学友と鳥海山に登り、三十歳のこ
ろに秋田・太平山御手洗まで登ったことがあったが、以来、山とは縁のない暮
らしだった。とにかく虫に刺されやすい体質で、二度ほどハチに刺され、今度
刺されでもしたら危ないといわれたり、蚊もブヨも隣にいる人には来ないで自
分にだけ来て刺しまくるし、蛾の鱗粉にはカブレる。それが分かっているから、
連れ立って登ることはなかったし、私から誘うこともなかった。クマや道迷い、
天候悪化による遭難など山のリスクはある程度承知はしているだろうが、そ
れでもおにぎりを作って送り出してくれたことは有難いことだった。山頂で風
に吹かれ、口の中に広がるその味を噛みしめた。山頂からは八幡平のリゾ
ート地などが眼下にあった。一通り眺めを満喫した後は、どうせここまで来た
のだし、とお鉢を巡った。噴火口の縁を巡るお鉢コース。真ん中に茶碗のご
飯を盛って逆さにしたような形の妙高山を右に見ながら周回する。岩手山神
社の奥宮(神社とはいえ石を組み合せて造ったもの)のあるあたりは霊場の
雰囲気だ。1周を約20分で回った。

 下山は8合目小屋の人の助言に従い旧道を下る。砂礫岩礫の斜面につい
た踏み跡を選び、時にはショートカットして適当に下っては何度も転びそうに
なった。もう膝がガクガクなのだ。岩は表面がぐにゃりと曲面になっていたり、
気泡の痕だったりしているから溶岩だったことが分かる。新道を通れば、岩
手山は花の山という印象は薄まるかもしれない。ただ、数年前の8月、御神
坂コースで登った時、山頂部お鉢のコース上で見事なコマクサを数株見たこ
とがあったことは記憶に残っている。

 4合目分岐でおにぎりとミニあんぱんを食う。それからゆっくり助言どおり新
道に向かい、樹林の中の朝に登った路に戻った。初めての路のように感じる
が、路傍のオダマキには見覚えがある。登りの時と同じくこの花に励まされつ
つ、消耗してきた膝のせいでへっぴり腰になってバタバタと段差を下った。若
い男性二人連れを越した時に、難儀な山ですねエと声をかけると、ほんとで
す、と返ってきた。よし、若い奴らを追い越したぜと心で快哉を上げた。

 午後3時25分、登山口に到着。ポストに下山時刻などを書いて投函した。

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